ホントは危ない特別区の財政〜「財政シミュレーション」のトリックをあばく〜

大阪市の財政は再び悪化しつつあります

財政収支試算の比較(2018年度と2020年度)

ご存じでしょうか。関市長や平松市長の時代から本格的に取り組まれた財政再建の結果、随分、改善が見られた大阪市の財政が再び悪化しつつあります。上のグラフをご覧ください。これは財政局が毎年試算する収支予測です。左(緑)の2018年試算に対して、右(赤)の2020年の試算が随分悪化していることが見て取れます。

なぜこうなったか。財政局はこう解説しています。「新大学基本構想に伴うキャンパス整備や市立美術館の大規模改修などの事業費を計画ベースで織り込む一方、金利の低下に伴う公債費の減等を反映した。その結果、試算期間を通じて通常収支不足が生じるなど、前回(2018年2月版)に比べ収支が大幅に悪化する見込み。特に、期間終盤では、高齢化の進展や障がい福祉サービス利用者の増加等に伴う扶助費の増や、投資的事業の財源として発行する起債償還の増等により、通常収支不足が拡大する見込みとなっている」

もちろん財政悪化や財政破綻が不可避というわけではありません。そもそもこの「今後の財政収支概算(粗い試算)」は「行財政改革」を徹底的に行い、『通常収支(単年度)の均衡』をめざすためのものです。ですから大阪市が今すぐにやらなければならないのは、近い将来財政収支が悪化しないように、不要不急の財政投資を見直し、健全な大阪市財政に軌道修正することです。

ホントはもっと深刻な2020年の試算

松井市長が前提条件の変更を命じた試算ともともとの試算の比較

2020年試算にはもう一つの秘密があります。松井市長が財政局の収支概算が厳しすぎると、試算の前提条件の変更(左)を命じたのです。つまり、これまでとは試算の基準が変わっているのです。では、これまでの基準(右)で試算したらどうなるでしょうか。これも財政局の「収支概算(2020年3月版)」には示されています。その違いを示したのが右のグラフです。比較すると特に都構想への移行が予定される2025年以降が急速に悪化することが見て取れます。

しかも、この試算には新型コロナウイルス感染拡大の影響が反映されていません。だから財政局はこの試算について、「とりわけ、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大が歳出・歳入両面に与える影響については、特に注視していく必要がある」と注意を促しています。

財政局の収支概算について詳しくご紹介した理由は、これをもとに都構想の「財政シミュレーション」が作られているからです。副首都推進局は当初、2018年試算をもとにしたものしか公表していませんでした。

都構想に慎重な委員から、2020年の収支予測が悪化していることやコロナ禍で歳入の減少と歳出の増加が見込まれることから再試算すべきとの声が上がっていました。

特別区はきっと財政収支不足におちいります

見通しの甘い財政シミュレーション

これに押された副首都推進局は8月11日、2020年試算をベースにした財政シミュレーションを公表しました。なんとその内容は驚くべきことに「収支不足は発生しない」というものでした。いったい、どうなっているのでしょうか。

まず考えなければならないのは、収支概算の試算方法を変えたこと。以前の方法で試算を用いれば、2025年で10億円、2029年ではなんと161億円も収支不足額が拡大します。

また、特別区の財政は大阪メトロが生み出す収益に過度に依存しています。シミュレーションでは、毎年71億円が特別区に納入されるとしています。特別区の通常収支の赤字をメトロ1社の収益で黒字化する形です。メトロの収益は2019年4月に作成された「中期経営計画」(2018~2025)に基づきますが、すでにこの4月~6月期の決算がコロナ禍の影響で39億円の最終赤字となっています。7月以降も経営は厳しいようです。

さらに、更新されたシミュレーションはコロナの影響を全く見積もっていません。松井市長は、国が地方交付税や臨時の交付金等による相応の財源措置を講じてくれるから大丈夫と言っているようです。そんなに国を信頼しきっていいのでしょうか。国の財政も逼迫すると予想されるだけに、慎重に考えないといけないのではないでしょうか。

仮に税収減を地方交付税で補填してくれるとしても、それは基準財政需要額に関する部分だけで、国の制度を上回る福祉や医療費助成などは対象外です。ましてや勝手に大阪市を廃止して、特別区に分割するために要する費用なんて全く面倒を見てくれないでしょう。

はっきり言います。特別区は財政収支不足に陥り、財政破綻する可能性もあります。

今こそ「政令指定都市・大阪市」
という大きな器が必要です

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