コロナと子どもの居場所
Tweet今、本当に都構想は必要でしょうか?
コロナ禍の中、市民の暮らし・命が脅かされる状況が今なお続いています。REAL OSAKA(リアルオーサカ)は、現場で対応にあたっている人達から現状に苦しむ人々の声を集めました。第3回目は「居場所カフェ」の活動を行うNPO法人FAIRROAD様にお話を伺いました。
- NPO法人FAIRROADを立ち上げた経緯
- 「居場所カフェ」の発足経緯
- 「居場所カフェ」の活動とは?
- 新型コロナの「緊急事態宣言」後の再開状況
- 地域での活動はどんな感じでしょうか?
- あったらいいな、と感じる行政の支援や助成は?
- やるべきことがたくさんあるなかで再び「都構想」の住民投票が準備されています。
- 今、子ども支援の現場で求められているもの
- NPO法人FAIRROADについて
もくじ
NPO法人FAIRROADを立ち上げた経緯を教えてください。
もともと住吉区で塾をしていたんですけど、そこで出会った子どもたちが塾には来ているものの全く成績が上がらない。私はめちゃくちゃ教え方がうまいので原因は私ではないという自信があって(笑)。
そう思ってたところ、家に勉強する場所がないとか、昼夜が逆転した生活をしているとか、地域から排除されている子どもたちがいることが見えてきたんです。
そこでまずは家の片付けを手伝ったり、お母さんの悩みを聞いたり、そんなことをしているうちに実際に子どもたちの成績が上がっていったんです。
すると子どもたちが塾を休まなくなった。学校には行かないけど塾には来るようになった。学校ではしんどいっていう状況を言えてない、学校にはそこまで余裕がないんだということがわかってきました。
日本では保育所を卒業したてのたった6歳の時点でケアされる環境がなくなります。家でケアする余裕がない限りはもうどこにもない。学力格差とかいろんな格差って、生活が安定していない子どもたちへのケアがない限りは何も改善されない、という意識が私の中にそもそもありました。
そんな時期、大阪マイペンライというアジアと教育交流をしている団体のスタディツアーに行った時に、絶対的貧困状態にあるアジアには子どもをケアする場があったんです。みんながおせっかいというか、「ひとりにさせたらかわいそう。寂しいやん」って言うような環境があって。
向こうはインフラは整っていないけどケアする環境がある。日本はインフラは整っているけどケアする環境がない。その気づきを国内で伝えていきたいと思っていました。大阪マイペンライの運営が難しくなって、これで途絶えてしまうというのはもったいないということで、最小人数でNPOを立ち上げたんです。
それが「居場所カフェ」の活動にどうつながったのでしょうか?
アジアでは学校そのもの全部が居場所というか、そもそも宗教も混在しているし、一人ひとり違うことが当たり前として支援やサポートが考えられている。日本では学校の中ではみんな一緒であることが求められて、一人ひとりの違いっていうのは大事にされない状況があります。
2015年にofficeドーナツトークという一般社団法人で活動されている辻田梨沙さんの講演会にたまたま個人として参加していて、学校の中に居場所を作る「居場所カフェ」の存在を知って一目惚れしました。
ドーナツトークで一年間契約社員としてお世話になって、そこでしっかりノウハウを学んで、代表の田中俊英さんたちの了承を得たもとで、暖簾分けのような形で私たちのNPOでも大正区の高校で校内の居場所カフェをスタートさせました。今は高校3ヶ所、中学2ヶ所、地域で2ヶ所で居場所カフェの活動をしています。
「居場所カフェ」はどんなスペースでどんな活動をしているのですか?
高校では空き教室をそのまま使わせてもらったり、中学校では図書室でさせてもらってます。備品が全部置いたままのところもあれば、会議室を使わせてもらったりもしています。
高校は週2回、中学は週1回くらいのペースで予算的にも人員的にもぎりぎりでやっています。
授業が終わるとみんなが来てお茶を飲んでお菓子を食べておしゃべりをします。全生徒が対象で理由がなくても誰が来てもいい。今しんどい子も、明日しんどくなるかも知れない子もその中に含まれている。全部が対象です。
新型コロナの「緊急事態宣言」後はどんな状況で再開したのですか?
当初は学校もどう対応していいのかわからない状況で教育委員会、教育庁からも指示がなく大変混乱していました。生徒たちがどうなっているのか大変心配していましたが、休み期間が終わり学校が再開したあとは生徒が前半後半に分かれて分散登校したりという状況で、様子を見ながらそろりそろりと再開しました。
消毒やマスク、距離を取ってみたいな、ある程度のルールはあったんですけども、今は、コロナの前よりもかえって多くの子どもが来ていますね。やっぱり対面のエネルギーを求めていたのかな。
分散登校の期間は部屋を開けずに、玄関あたりですれ違った子に、顔だけ見せよう、挨拶しようって行ったんですよね。そんな時も顔を見たらウワッと駆け寄ってきて「元気やった」みたいな。オンラインじゃなくて、実際に会ってしゃべってっていう空気感が子どもたちをすごく元気付ける。
ひとりでいるのが楽というのに慣れている生徒にとっても、やっぱり温度を感じる距離感が大事なんだなというのを感じました。
新入生の子どもたちも早速来てて、結構仲良く居場所になってます。
地域での活動はどんな感じでしょうか?
一番近い小学校を対象に今はコロナで人数制限をしながら午前午後で低学年高学年で分けてやっています。
午前中は学び。何かテーマを決めて考えたり話し合ったりすることを主としていて、お昼ご飯をみんなで食べて午後からは文化体験をするっていうのが1日の流れですけども、今はぎゅっと縮めて午前と午後で同じことをしています。
1年生から5年生まで小学校の2人に1人ぐらいが来ています。ソーシャルワークの視点は大事にしていて生活基盤とかも発見できるような運営を心がけています。地域でとりくまれているフードバンクに繋げたり、予防支援といった関わりもできている状況です。
こういう行政の支援や助成があったらいいな、というものはありますか。
仕組み自体は、結構できてるんですよ。貧困の子を支援する制度はあるけれども、行政の習性というのか枠からはみ出ると責任が問われるからそこまではいけない。本当にしんどい子どもたちには届かないっていうところがあって。
個々の担当者に想いがないとなかなか仕組みが機能しない。機能しない中でやっぱりしんどい子どもたちがこぼれ落ちている、というのが現場での実感です。
やるべきことがたくさんあるなかで再び「都構想」の住民投票が準備されています。
18歳から選挙権があるけど子どもたちへの主権者教育はできていません。「都構想」もほんまに価値のあるものならば子どもたちにもわかるような説明をする義務があるんじゃないかな。子どもたちが置いてけぼりになっていて、課題を抱える子どもたちは特に政治に関して参加できていない。
ちゃんと話せばわかるんですよ。だからちゃんと話して欲しいなって。選挙権を18歳に引き下げておいて勝手やなと思っています。親も選挙に行っていない家庭で選挙が価値あるものだとは思えないし、どうせ声が大きい方が勝つんでしょ、って思わされてしまう。もう一回住民投票をする意味を私にも教えて欲しいです。
学校って政治的中立やから政治的な話は先生たちの中では特にないんです。高校は若干そういったことを話す人もいらっしゃるけど、中学校って本当にそういう議論はなくて。
私たちの居場所にはいろんな子どもたちが来ているので「都構想」について話せるような材料を私も欲しいです。賛成反対、どっち側の意見も散りばめたようなものがあれば生徒たちの声も聞けるし。
ただ今の区の状況でもたくさん見落としてる子どもたちがいるのに、これ以上区が大きくなるとどんだけしんどい子どもが増えるんやろうと思う。
そこは絶対大丈夫と言い切ってもらえる何かを私は知りたいんですけど、まだ自分の中で「都構想」になっても大丈夫やと思えることはあまりないです。
児童相談所も4ヶ所作るっていってるけれども、職員の方に聞くと人手がまずいないと。1カ所でも大変な状況やったのに、人材育成も進んでいなくて4カ所にしてどうなるのか。本当にきちんと考えられているのかと思います。
今子ども支援の現場では何が求められていますか。
子どもサポートネットっていう制度が全国展開されているんですけど、このサポートネットの推進員の人って年収200万くらいなんですよ。年収200万で家庭のサポートもして、不登校も防いで、引きこもりも防いで、主体的な進路選択もさせて…無理です。
人材も育たないし、次年度がわからないような雇用のされ方で、地域の人たちをなんやと思ってるんやろ、って思います。みんないい人だからってやってくれているのに、そういう扱われ方をしたら誰も推進員にならない。
学校の先生もこんなに全部の責任を負わされて、私の知人も大阪にいたくないから兵庫とか別のところで教員採用試験を受けているという状況があります。
そうなっている現場を本当に「都構想」で補っていただけるのであればぜひやってほしいです。「都構想」自体よくわからないけど結果的に子どもたちの利益になるんであればぜひやってほしいとも、思っています。
NPO法人FAIRROADについて
- NPO法人FAIRROAD ホームページ
- 住所:大阪府大阪市天王寺区上本町3丁目5-16-1001
- 090-1074-9863
私たちについて
私達「REAL OSAKA(リアルオーサカ )」は、正確な情報をみなさんにお届けし、正しい判断をしてもらうために結成したプロジェクトです。
大阪市を解体するような大変重要で大がかりなことを、十分な議論と正確な情報が与えられないまま、判断を求められていることを危惧する有志の集まりです。
私達と同じように問題意識を持つ市民や団体が、多くの方に発信して頂けるように、自由に使えるロゴデータなどを制作し発信することに致しました。いずれも、皆様の名の下に配布・利用を頂けるものです。
なお、私達自体は特定の政党や候補者を支持する政治的目的はございません。(当サイトのクリエイティブを利用した皆様の活動におかれましてはこれを制限するものではありません)
また、同プロジェクトに参加するメンバーの氏名や活動拠点の所在地は、非公開とさせて頂いております。名前を公表することで、真意はどこにあるのか詮索され、誹謗中傷や攻撃にさらされることを私たちは怖れています。メンバーは普段、会社員であったり、クリエイターであったりと様々ですが、大阪を愛する一人の有権者として、いま目の前に提示されている案を真剣に考えよう、そのことを発信するためのプロジェクトです。
私たちの意思は、ただそれだけです。
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