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コロナと介護現場

今、本当に都構想は必要でしょうか?
コロナ禍の中、市民の暮らし・命が脅かされる状況が今なお続いています。

REAL OSAKA(リアルオーサカ)は、現場で対応にあたっている人達から現状に苦しむ人々の声を集めました。
第7回目は大阪市介護支援専門員連盟の滋野さんにお話を伺いました。

    もくじ

  1. 大阪市介護支援専門員連盟について
  2. 活動を進める上での苦労や悩み
  3. 介護現場が受けた影響
  4. 市議会へ提出した陳情書について
  5. 自治体の助成・支援
  6. リアルオーサカで何かできることはありませんか?
  7. もし「大阪都構想」が住民投票で可決されたら…

大阪市介護支援専門員連盟が普段どういった活動をされているのか?組織の概要など、お聞かせください。

滋野さん 介護現場のコーディネーターとして、ご本人やご家族の意思を尊重したサービスを提案するのが、ケアマネージャーの仕事だと説明する滋野さん

介護支援専門員というのは、ケアマネージャーと呼ばれている職種です。高齢者の方が在宅で要介護状態になっても過ごせるようにサービスの仲介や相談などを行っています。直接介護をするわけではありませんが、介護現場のコーディネーターの役割を担っています。

地域の社会支援という形になるのですが、大阪市の場合、まずそれぞれの区にある高齢者に対するサービスの事業所やサービスを提供する事業者さんをあらかじめ把握しておきます。そして高齢者の方やご家族からの相談を受けてそれぞれの状態に合わせたサービスを提案するというように、ご本人やご家族の意思を尊重した形でコーディネートを行っています。

活動を進める上でのご苦労や悩みなどありますか。

よくある悩みとしては、本人と家族の意向が違ったりすることです。例えば、家族はデイサービスで半日くらい預かって欲しいんだけど、本人は行きたくないというようなことです。

あとはお金の話ですね。サービスも利用した方がいいんだけど、使ったら使った分だけ、収入によって1割から3割の負担が利用者にかかります。しかし本人の経済的事情でその負担ができないからとサービスを受けないことも。

生活保護を受けておられる方も割とおられて、なかには月頭にもらったお金をパチンコで使い切って生活費が足らなくなるというようなお金に無頓着な方もいらっしゃいます。そんな方には、少しでもいいからと節約をしてもらうようにお願いはしているのですが、なかなか難しいですね。

コロナ禍の前から、介護従事者が定着しないという問題があったと思いますが、現状はいかがでしょうか。

事業所にもよりますが、きつい、汚い、給料が安いっていう3Kのイメージが根強くあって、新しい人、特に若い人がなかなか入ってきません。長く支援の仕事をしている方も、生活できないから仕方なしにサービスを受けているという利用者の方にひどいことを言われたりすることがあります。

この仕事に就いている方は、人のためになりたいと思ってやっている方が多いのですが、その思いが通じないことが続くと燃え尽きてしまい辞めてしまうことも。ケアマネージャーでもそうなんですけど、思いの強い人ほどしんどくなる。そういうこともあり、なかなか人が定着しません。

給料自体は安くない。政府の制度があるので、若い方がフルタイムで働くと「こんなにもらえるの」って驚くような金額に、特に介護職ではなってきています。でも皆さんはご存じではない。

20年くらい前、介護保険制度ができたくらいの時期は確かに仕事がきつかったり、給料が安かったりしました。しかし、今ではずいぶん状況が変わってきています。でもやっぱり新しい方が入ってくるという業界ではありませんね。

また年配の方が運営されていた事業所では、その方が引退すると事業を継続する人がいなくてそのまま廃業になってしまうというケースもここ数年で増えています。

人がいないという苦しい状況の中で迎えた今回のコロナ禍ですが、介護現場が受けた影響というのはどのようなものでしたか。

コロナ関連の新聞記事の写真 介護従事者に医学の知識があるわけでもないので、介護現場では感染しない・させないために混乱が生じた

介護に携わっている人間といっても医学の知識があるわけではありません。一般の方よりは多少感染防止の知識はあるくらいです。新型コロナウイルスに関してはテレビなどの報道と同等のレベルの知識で、感染しないためにどうしたらよいのかとか、利用者さんがコロナにかかってしまったらどうすればよいのかとか、あたふたしました。

特に初期はそういう状態でしたね。それに用具も十分に揃っていませんでした。どの事業所にも手袋、マスク、消毒液はそれなりにあったようですが、防護服はほとんど用意されていません。おまけにマスクなどがあっという間に買えなくなってしまい「どうしよう」っていう感じでした。

介護の仕事はどうしても密になります。利用者も介護する方も不安感を持ったままの状況が続いていると思いますが、実際に携わっている担当の方は、どういう対応されていたのでしょうか。

私たちは、基本的に利用者のお宅に伺って介護する訪問の事業所ですが、思ったより拒否はありませんでした。利用者自身が一人で生活できないという状況の方が多く、来てもらわないと仕方がないということもあったと思います。「コロナやからしばらく来んとって」っていう方も一部ありましたが。

反対に、10人から20人くらいが一つの施設に集まるデイサービスでは「コロナが怖いから行くのをやめとくわ」という方が増え、経営に結構ダメージがあったところが多数ありました。つまり、クラスター発生が怖いということですね。実際、名古屋では初期にクラスターが発生して、役所から休業依頼が来たところもありましたし。

コロナの感染が今も続いています。その感染拡大防止対策として何か取り組んでいることはありますか。

うちの会社には拠点がたくさんありますが、別の拠点の職員と基本的に会わないようにしています。また、会社の飲み会はやめ、感染しそうなところに行くのを避けるようお願いしています。私たちが利用者にうつしてしまったら、直ちに亡くなってしまうかもしれない。そんなリスクのある仕事なので、自重しましょうと職員に言ったりしています

現在では用具も足りてます。マスクとかは流通するようになりましたし、消毒液も大阪市が配り始めています。1カ月、2カ月前より改善してきた感じですね。

2カ月前は「このままでは用具がなくなってしまう」という感じがありました。知り合いの事業所では本当になくなってしまい、かなり割高なマスクと消毒液を何十万円という価格で買っておられました。しかしそれらの経費をサービス料に添加することはできません。結局、事業主の持ち出しになりきつかったと思います。

また東京や大阪などで感染が拡大しつつあります。介護現場にも不安感が増えてきているのではありませんか。

漠然とした不安感はありますね。実際、職員の子どもが行ってる高校でコロナが出た、じゃあどうしようっていうことがありました。しかも詳しい情報が分からない。同じクラスなのかどうか、当人が濃厚接触者なのかどうかわからないんですよね。そうすると、職員であるお母さんに、とりあえずリスクを避けるために「今日のサービスは行かんといて」と言うことになります。これが増えてくると、働けないし、働いておられる方は収入が減り、経済的に困りますよね。

職員にはシングルマザーの方もたくさんいらっしゃるそうですが、コロナのため休業せざるを得ないということなどあったのでしょうか。

全体的に事業所を閉めることはありませんでしたが、コロナの影響で学校が長期間休みになった時、小さいお子さんがおられる職員さんは「仕事に行くのが難しい」と休まれる方がそれなりにいました。また初期の頃はコロナに対して情報がなかったということもあり、乳児がおられる方は子どもにうつしたらいけないからと、しばらく仕事を控えさせてくださいとおっしゃる方もいました。

5月11日に市議会に陳情書を提出したと伺っていますが、その内容はどのようなものだったんでしょうか。

まずは、このままの状況が続くと介護崩壊するということをわかっていただくためでした。用具が足りてないうえに情報が行き渡っておらず、どのくらいの感染予防対策をすればサービスを提供していいのか、ガイドラインを出して欲しいとお願いをしました。

介護崩壊とは、どういう状態のことをいうのでしょうか。

僕たちが介護崩壊っていう言葉を使う時は受け入れ先がない状態のことです。たとえば、コロナのクラスターが発生した施設では、ほかの入居者を他の施設に移さないといけない。しかし受け入れ先となる介護施設では病院のような感染対策ができないし、知識があるわけでもない。そのため、コロナのたくさん出た施設の入居者さんを受け入れるのはちょっと無理ですとなる。そんなところが増えてくると必要なサービスの提供を受けられない利用者が多数出てきます。それが介護崩壊という状態だと思うんです。

これは利用者の生活が脅かされることであり、下手したら1日以上ものが食べられないとか、ずっとオムツを換えられないみたいな状態が生まれるということです。コロナ感染が今よりもっと拡大すれば当然、このような介護崩壊が起こりうるでしょうね。

介護崩壊の危機を訴えられた陳情書だと思いますが、そのあとに大阪市からフィードバックはありましたか。

コロナ対策の部分に関しては、対策しますというような返事は来ていて、消毒液が配られたりしました。また医療のために集められた雨ガッパがめちゃくちゃ余っていて、それを介護事業所に配ろうとしています。

コロナ対策以外のところでは、どういった回答があったんですか。

コロナ対策以外では、大阪市が特定の団体に委託してやっている介護度を決める認定調査がものすごく遅れていることについて2度目の陳情をしました。国のルール上、認定申請の更新を2、3年おきにするのですが、そのために認定調査の結果を概ね30日以内に出さないといけません。しかしアンケートを取ったら30日どころか60日未満すらあまりないぐらいめちゃくちゃ遅い。それでコロナの前になんとかして欲しいという陳情をしたんです。1回目の回答では今年度中くらいにはなんとか正常化しますということだったんですが、数カ月後にアンケートを取ってもこの状態はあんまり変わっていなかった。それで再度陳情となりました。

介護認定は期限がありますので、認定が遅れると大きな影響がでます。まず期限が切れてしまうと介護度がわからなくなり空白期間ができてしまいます。申請をしていれば後からその空白期間は埋められますが、そのときに介護度が上がるのか下がるのかがわからない。そのため、もし介護度を超えたサービスをしてしまうとその利用負担が10割利用者にかかってしまうこともあり、介護度が出るまではサービスを抑えめにしておこうという発想になってしまいます。しかしそれは利用者の不利益につながること。それに加えて、認定の更新ごとにケアマネージャーが作る個別のケアプランも、空白期間に仮のケアプランを作り、認定が出た後、正式なプランを作らなければならないことになり、二度手間になってしまいます。これはケアマネージャーにとって大きな負担です。

この間、コロナの関係でさまざまな支援や助成が出されています。現在、なにか支援的なものを受けられているのでしょうか。

自治体によっては、マスクや消毒液の価格が高騰しているので一事業所につき10万円補助するというような施策をされていますが、大阪市の場合、金銭的な支援はないですね。支援していただくのも大切なことですが、まず、どういう状態ならサービスを提供していいのかという部分の明確化ですとか、検査を早く受けて早く結果を出してもらうこと、また感染されたとされる方が他者にうつす可能性があるのかないのかなど、はっきりわかるようなガイドラインが必要です。そういったものがあればサービスを提供できるかどうかや、受け入れが可能かどうかなど決められます。

しかしコロナ自体が解明されていないせいもあると思いますが、介護の専門家でもわからないことだらけ。だからみなさんも大変迷っていて、「これでいいのかな、でもこの人にサービスを提供しなかったら死んでしまうかもしれないし」という感覚で働いているんですよね。だからこそ働いている方の不安をできるだけ取り除ける何かが必要だと思いますね。

先日、ライブハウスの方もおっしゃっていましたが、今まで考えていなかったことを考えないといけないので何が正解かわからないと。

そうでしょうね。みなさん一生懸命やっておられるんですけど何が正解かってわからない。行政の方もこれが正解ですと言うのは難しいとは思いますが、ある程度の幅でこれくらい対策すれば大丈夫とか、良い悪いっていうのを示してもらえると助かるのですが。

私たちはリアル大阪という団体で、いろんな団体と団体との橋渡しをして繋げていくような活動をしていきたいと思っています。みなさんの困っていることなどをウェブサイトやSNSを使って告知し、それが広がって行ければと思っているんです。そちらの連盟では何かお困りのことなどありますか。

僕らがやっていることでいうと、もっと現場の声が届きやすい何かが欲しいということがあります。ケアマネ連盟をつくった理由もそこです。行政に一人で要望など出しても聞いてくれませんから。大阪市は幸いケアマネージャーの団体ができました。しかし介護業界全体でいうと、あんまり結集していないですね。ゆるく集まってる団体はいくつかあるんですが。たとえば、在宅といっても訪問介護とデイサービスでは業務形態も介護の仕方も全然違い、それぞれのニーズも違ってきます。なので各サービス部門ごとにゆるい集まりできてはいるのですが、数が少ないこともあり大きな力になりにくいです。

行政の方も知りたいとおっしゃるんです。しかし、届く仕組みがないから聞こえていない。もちろん声を届けたら、全部が叶うわけではありませんが、「そういうことで困っているんだったら、行政としてできるところはなんとかしなければ」と考えてくれるはずです。だからこそそんな仕組みづくりみたいなものがやっぱり大事なんだなと、この連盟の活動を通じて一番感じています。

大阪市では都構想をめぐり住民投票が実施されます。その住民投票が可決されると、介護保険事業が一部事務組合になるんですね。

そうです。僕たちは、都構想については政治的スタンスがいろいろあることもあり、表だって反対とは言っていません。しかし、役員の中で一致しているわけではありませんが、一部事務組合になることに対しては反対というか、もっと知ってもらわないといけないという思いがあります。僕ら自身が議員の方と話をすることによってわかったのですが、「そんなことになるの」と。遠くなったらよくないと僕らは思ったのですが、ほとんどの市民の方は知らないと思うんですよ。それをケアマネージャーに伝えていくのが政治団体でもある僕らの役割で、大阪市で働いているケアマネージャーさんには特別区になったら、介護保険行政はこうなるくらいのことは言っていかないといけないと思っています。

一部事務組合については、情報もあまりなくて正直よく分かりません。一部事務組合になったら今より悪くなるのだろうと思うのですが、言い切ることもできませんし。先ほど言っていた認定調査もこれまで以上に遅れるかもしれないということもあるのですが。僕らが言っているのは、声を届けにくくなるんだよっていうことです。たとえば僕らが声を届けたことで、認定調査は変わろうとは動き始めています。でも一部事務組合になると、このようなことができにくくなる。それは困るよねっていうことは伝えていかないとあかんなあと思っています。

ケアマネさんとかは、一部事務組合になってしまった時のことをどういうふうに考えているのでしょうか?

大半のケアマネージャーさんは、一部事務組合になることを知らないと思います。一般市民もそうだと思うんですけど、大阪市が四つに分かれて、北区と天王寺区と中央区、淀川区という名前になるっていうのは知っていると思うんですけど、細かい制度設計についてはほとんどの方は知らないと思います。

やっぱり、絶対的な情報が足りてない?

インタビューに答える滋野さん 都構想が実現すると、介護を取り巻く環境も大きく変わるが、「市民はもちろん、現場でも一部事務組合のことについて知らない。これが現実です」と語る

そうだと思います。もう一つ言うと、僕たち、今月末に連盟でケアマネージャーさんに向けて「都構想ってなんなの」って言うウェブセミナーをやろうとしてるんですけど、そこで、あんまり政治的になったり難しくなったりするとたぶん聞いてくれない。なので入口をどこに持って行こうかみたいなところで侃侃かんかん諤諤がくがくと議論を重ねています。

住民投票には制度の設計の是非みたいなところがあります。でも、その制度の設計の是非についてはあまり議論されていません。なんとなく維新がやっているからいいのかな、みたいな空気感ですよね。コロナで吉村さんも頑張ってるしみたいなイメージで流れていますが、市民はもちろん、現場でも一部事務組合のことについて知らない。これが現実です。

なので、都構想反対とか一部事務組合反対っていうことを僕たちが言うんじゃなくて、「こうなるんだよ」っていう情報をみなさんに知ってもらうっていうのが一番大事かなと思っています。あまり極端な政治的スタンスは連盟としてもそうだし、僕ら個人としても出さずにやって行こうと、今の時点では考えています。

今連盟に加盟されている方は何人くらいでしょうか。

連盟ができて2年くらいで、60人から80人くらいです。これから広げていかないとと思っているところです。

一部事務組合の話もしていこうとは思っていますが、政治的な話になるとやっぱり集まりは悪いです。都構想ってなった時点で、「私には関係ない」とみなさん思うんでしょうね。自分たちが受けられる行政システムの受益部分が、今より悪くなるかもしれないんだよというところを伝えないと響かないでしょうね。自分が損をする得をするっていう話が一番響きますから。ケアマネージャーであれば、ケアマネージャーにとって今よりやりにくくなるっていう部分にフォーカスを当てないといけないかなという感じです。

ただ、わからないことも多くて言いにくい部分もあります。おそらくそうなるとしか言えないので。それに都構想といっても100%悪いことばっかりでもないはずだと思うんですね。四つの区に割ることによるメリットもあると思うので、そこを無視して全部悪いって言うと響かないだろうなと。「維新が嫌いなだけとちがうん」ってなるかもしれないので、そこを気をつけなあかんねって言ってます。

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私達「REAL OSAKA(リアルオーサカ )」は、正確な情報をみなさんにお届けし、正しい判断をしてもらうために結成したプロジェクトです。

大阪市を解体するような大変重要で大がかりなことを、十分な議論と正確な情報が与えられないまま、判断を求められていることを危惧する有志の集まりです。

私達と同じように問題意識を持つ市民や団体が、多くの方に発信して頂けるように、自由に使えるロゴデータなどを制作し発信することに致しました。いずれも、皆様の名の下に配布・利用を頂けるものです。

なお、私達自体は特定の政党や候補者を支持する政治的目的はございません。(当サイトのクリエイティブを利用した皆様の活動におかれましてはこれを制限するものではありません)

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私たちの意思は、ただそれだけです。

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