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コロナと障がい者支援

今、本当に都構想は必要でしょうか?コロナ禍の中、市民の暮らし・命が脅かされる状況が今なお続いています。REAL OSAKA(リアルオーサカ)は、現場で対応にあたっている人達から現状に苦しむ人々の声を集めました。第6回目は障がい者の自立支援に携わる障大連の古田さん、鳥屋さんにお話を伺いました。

    もくじ

  1. 障大連とは?団体の概要、活動について
  2. 所属団体について
  3. コロナ禍の介助の実状
  4. 行政の支援に関して
  5. 普段の生活で困っていること
  6. 感染クラスターについて
  7. 現場の状況について
  8. 住民投票について
  9. もし都構想が実現されたら?

障大連さんの団体の概要、活動を教えていただけますか?

古田さん・鳥屋さん 大阪府内の障害者の地域生活を支える事業団体が集まり、制度の政策提言なども行っている

古田障大連は障がい者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議と申しまして、大阪府内のヘルパー事業所、グループホーム、相談支援、日中活動というような障がい者の地域生活を支える事業団体が90ぐらい集まって一緒に活動している団体です。

障がい者はかつては山奥の施設に収容されたり、親元で何十年も家のなかで暮らさざるを得ないような状況がありました。そういうところからどんなに重い障がいを持っていても、地域で普通の生活をしたいという障がい者が自立生活を始めまして、そこから地域の基盤がつくられてきたというような経過があります。

そういうふうな障がい福祉関係の団体、事業所が集まって大阪府や大阪市に対して、制度の政策提言などの活動を行っているところです。

色んな団体が集まって活動されているということですが、古田さん、鳥屋さんもそれぞれ地域の団体で活動されているのでしょうか?

古田僕は社会福祉法人あいえる協会というところで活動しています。重度の障がい者が施設から地域に出てきて、グループホームや一人暮らしで自立生活を送るためのサポート活動をやってます。現在はグループホームや日中活動、ヘルパー派遣、相談支援などの事業をやっています。

鳥屋私は都島区にあるNPO法人あるるという自立生活センターで活動しています。障がい者が親がかり、あるいは入所施設ではなく、あたりまえに地域で生活することで社会が変わっていくことをめざして、日中活動、ヘルパーの派遣事業をやっています。重度の障がい者が仲間づくりをしながら、社会に向けて発信していく活動をしています。

障がい者のみなさんは特にコロナ禍の中にあって、介助など密にならざるを得ない状況があったと思うのですが。

鳥屋重度の障がい者は介助してくれるスタッフやヘルパーさんとの距離感が物凄い近いです。感染予防のために人と人との距離を取るようにといわれるわけですが、距離を置くことなんてできない。いかにして密接しながらでも感染予防に心がけるのか。日々どうすればいいのか、自分たちの生活づくりに取り組んでるというところです。

古田介護や支援の仕事っていうのは常に密着の仕事です。体を抱えてお風呂に入れたり、トイレ介護、食事介護、常に近距離で密接した仕事です。マスクをするのが難しい人もおられますし、体を動かさない分、熱がこもりやすく、感染していないのに熱が37度5分を超えてるような日もあったりします。

日によって半分が通所する、また別の日に半分が通所するっていうように工夫をしたり、あるいは別の一室を借りて、そこに分けて通所する。ビニールシートを吊ったり、アクリル板を立てたりみたいな防護対策もしながら。どれが正解というのはなかなかないんですけれども、できる限り色んな情報を集めて、みんな手探りで日々やっているところです。

マスクが足りなかった時期があったと思うんですが、行政から支援などはあったのでしょうか?

鳥屋さん マスクやアルコールなど、一時は足りない状況が続きひっ迫した状況だったと語る鳥屋さん

古田マスクとか手袋とかアルコールっていうのは毎日たくさん使う必需品です。トイレットペーパーから始まり、マスク、アルコールが軒並みなくなってきましたし、ハンドソープ、あれなんかもなくなっていきましてね。だからその都度「どこで売ってるでー」って言うたらそこにすぐ走るとかいうようなことを繰り返してましたけど、もうマスクなんかも自分らでつくったりみたいなこともありました。

鳥屋行政の支援はちょっとタイムラグで遅れてしまったんですね。あとになって厚労省のほうからとか大阪市のほうから送っていただいたんですけれども、一時は非常にひっ迫した状態がありました。

利用者のみなさんから普段の生活での困り事などの声は寄せられていますか?

古田日中活動に毎日通って生活パターンをつくってきたわけですが、それが崩れると非常に不安定になる人が出てきたりしました。また、運動不足に陥ったり、外にやっぱり出れないっていうのは、しんどいような状態で。もちろん家の中で介護は別につけたり、日中活動を休んだひとは日中活動のほうからグループホームのほうに応援に入るとか、職員もあっち行ったりこっち行ったり一日に何軒も回らないといけないような、そういう支援体制に変更するのがしんどかったり。

あと当事者もですね、繁華街に出たり、遊園地みたいなところに行くのが楽しみにしておられる人もいるわけですけれども、電車に乗っていくことも、繁華街に出ることもやっぱり避けるべきだろうということで。そういう楽しみがすべて奪われていくというような状況におかれまして、本人さんは大変しんどい状態。もちろんコロナの感染の不安も。実際目に見えないものですから、なかなか理解もしにくい。あるいは恐れだけがどんどんどんどん先行してストレスを溜めて、精神的にも不安定になりはるというような、そういう人もおられましたね。

病院や介護施設がクラスターという扱いを受けて、理不尽なバッシングをされることが相次ぎましたが、どのような注意をされていましたか?

鳥屋それぞれの自宅で介助を受けながらの自立生活で、一人の障がい者に十数人の介助者が朝や夜や代わりながら生活を支えてるというなかで、介助を受ける側がかかると、介助者十数人の出入りがあるわけなので、そこに感染が広がる。介助者、ヘルパーがかかると、介助に入れなくなりマンパワーがなくなっていく。一人欠け二人欠けすると自分たちの団体だけでは賄いきれなくなる。やはり行政とか、地域全体の支え合いのなかで対応していかないといけないと思ってます。

古田障がい者にとってグループホームは家ですし、一人暮らしの自立障がい者のところもですね、誰かが介護に入らないといけない。日々の生活を守るためには常に介護が要る。クラスターが出ようが、感染者が出ようが、そのひとの生活を誰かがなんとしても支えなければいならない、そういう状況にあります。

大阪府の取り組みがまだまだ遅れています。他府県では、もし感染がクラスターで広がってしまった場合は、周りの他法人から応援職員を派遣するような仕組みをつくられて、登録制度が始まってるんですけれども、大阪府は8月末から応援職員の登録が始まったところです。

厚生労働省は予め医療と福祉が連携してつくっておくべきと、例えば重度の障害者の入院先や宿泊療養ホテルを確保しておくよう働きかけてくれてるんですけれども、まだ大阪府ではそういう動きも見られない。

クラスターが発生したら、そこに入ってた職員が誰も入れなくなるっていう可能性が出てきます。みんな濃厚接触者になりますんで、二週間自宅待機になる。そうすると一気にその法人の支援体制が崩壊してしまうというようなことになってしまいます。

「大阪モデル」として大阪が先進的に取り組んできてるような印象があるんですけど、現場では全然違った状況があるんですね。

鳥屋障がいがあって、もともと基礎疾患や心肺機能も含めて、やはり弱いところがありますので、かかって重症化しだすとかなり一気に進んでしまう可能性があります。

検査を受けるのも高齢者とか、妊婦さんとかは早く、というのがありましたけども、そこに障がいっていうのがはっきりと書かれていないがために、やはりついつい「他の一般的な皆さんと同じ扱いなので待ってほしい」とかになってしまう。

じゃあその間、誰が介助に入ってどうできるか。一つ間違えると支援体制の崩壊につながります。医療現場というのは、クローズアップされますが、各地域で生活してる障がい者とコロナ感染の問題が知られるところはまだまだ少ないと思うんで、そういったことを知ってほしいと思いますし、障がい者の地域生活が維持できるような体制を私たちとともに考えるというということをしていただけたらと思います。

そういう状況のなかで大阪市では都構想の住民投票が行われようとしています。コロナ対策でそれどころではないと思うのですが。

古田さん 「いま都構想どころではない」というのが、福祉の現場のみんなの実感だと訴える古田さん

古田この間、大阪市では保健所が24カ所から1カ所に減らされてしまいました。保健所に連日電話かけてもつながらないし、夜中にかけてもつながらない。職員のみなさんは泊まり込みで必死で頑張ってはりましたけれども、保健所がほとんど機能不全に陥った時期なんかもありました。

今もですね、なかなか電話がつながらないと言われてますし、PCR検査はですね、10日間待ってくれとか、14日間待ってくれみたいなかたちで言われたりもするというふうなことを聞いたりもします。長い間検査が受けられないと、もう障がい者の福祉の現場は一気にクラスター化してしまいます。

ヘルパーさんも、毎日何軒も障がい者のお宅へ行って介護してはりますから、検査が遅れたらそれだけの期間仕事を失うわけですよね。二週間は入れないというようになると、もうほとんど仕事ができないような状態になります。障がい者の側も、それだけ間が空いてしまうととても生活できない、たちまち現場が回らなくなる。生活できなくなるっていうような状態に陥ります。

やはりもっとね、保健所とか、福祉の基盤を厚くしておかないと、こういう非常事態のときに対応できないんだっていうことを痛感しました。

「いま都構想どころではないです」っていうのが、福祉の現場のみんなの実感です。
そんなこと議論してる時間があるんやったら、いまの福祉の現場の実情を見て回っていただきたいですし、それをどう支えたらいいのか、もっと議論すべきことは他にいっぱいあるんやないかというふうに考えております。そんなお金があるなら、失業者対策やコロナ対策に使ってほしい。
ぜひ知事、市長は福祉の現場を知っていただいて、毎日ほんまにどんだけ大変な思いで日々の生活を支えているか、障がい者もなんとか日々の生活を凌いでいるっていう現状を知っていただいて、一刻も早く、現場任せの体制から、みんなで支えていける、他からも支えていただける、そういう施策を強く望んでおります。

鳥屋2月ぐらいから、外出の自粛が始まり、いまだにまだまだ先が見えないなかでどう生きていくか。介助を受ける人も、支援するひともどう乗り切っていくか、もうほんとに追われる毎日になっています。都構想という仕組みのなかで福祉サービスが同じ水準で維持できるのか。引き下げられることへの不安を心配する日々ですね。

このコロナ対策のなかで障がいがあってもですね、障がいがない人と同じように地域でどう生きれるか、そこを維持できる施策でないとやっぱりそれはすごくもろい社会になってしまうと思うんですね。

「都構想」になったらこうなるという具体的なイメージができないといわれます。

古田どの資料を見ても「障がい福祉は特別区で担います」っていうことしか出てこないんですね。特別区同士は別の自治体いう関係になりますんで障がい福祉の現場は非常に恐れています。いまの「都構想」の考え方っていうのは、大阪市の財源を府に吸い上げて、それを成長戦略ですとかインフラに投資しますよね。吸い上げられた大阪市は財源が確実に減ります。しかも特別区に分けられる。財政規模はそれぞれ小さくなる、っていうのは確実やと思いますね。そうするといままでの障がい福祉サービスの水準が守れるのだろうか。

いままで市単独で実施してきた事業も、それぞれの特別区で維持できるとは思えません。確実に失くされるんじゃないかっていう恐れを持っています。

大阪市は全国で一番、重度の障がい者が地域で当たり前の暮らしができている歴史があって、そういう基盤をつくってきたんですね。それはもう誇れることやと思うんですが、そういう基盤が維持できなくなれば、重度障がい者はもう生活維持できなくなるという恐れを多分に持っています。「near is better」と言われてますけども地域の実情に応じてっていうことは確実にバラつきが出て引き下がる自治体が出てきます。特別区でもそういうことになります。「near is better」よりも、「いまのほうがベター」「分割は最悪!」っていうふうに言えるかと思います。

鳥屋隣の区との境目近辺に暮らしてる障がい者メンバーもいるんですけど、区をまたいで作業所に通うとかありますね。作業所に集まったメンバーのなかでも、福祉サービスの使える量が変わったりとか「このひとはいけるけど、このひとはだめ」とか、これまでは同じ施策のなかで同じ福祉サービスを活用しながら生活をしてきたのが、そこが区をまたがって今後メンバー間で利用できる内容に差が出てくることにならないか。

あといま、大阪市で独自に持ってる障がい福祉の事業があります。例えば入院時コミュニケーションサポート事業っていうのは、入院していながらでもヘルパーさんによる支援が一定受けられるような仕組みなんですけど、そういったのが大阪市がなくなることによってなくなってしまうんじゃないかと。そういう障がい者を支える事業は、非常に危ういでしょうし、生活に直結します。

古田コロナで社会状況とか財政状況は一変してる思うんです。コロナ前の計画で都構想は組み立てられてますけれども、大阪市をなくして特別区に分けてしまえば、今のコロナに対応できるのか。っていうようなことは全然議論もされてません。財政状況の見通しから、もう一回都構想の計画は検討しなおすべきやと。少なくともそう思います。障がい者の福祉の現場、日々の生活は色んな制度でなんとか支えられてるんです。けれども「都構想」になるとその制度は一体どうなるのか、暮らしがどう変わるのか、誰も説明できないんですね。障がい福祉の担当課に聞いても「さっぱり分からない」と言ってます。そんななかでですね、住民投票をやって、都構想を賛成か反対か、選べる状況ではないですよね。

「特別区になっても障がい者や高齢者の生活はこれからもずっと全く変わらないんだ。必ず約束します。」というふうに言うていただかないと、とても賛成できるような状態ではない。せめてそういうことをちゃんと説明していただきたいと思います。

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私たちについて

私達「REAL OSAKA(リアルオーサカ )」は、正確な情報をみなさんにお届けし、正しい判断をしてもらうために結成したプロジェクトです。

大阪市を解体するような大変重要で大がかりなことを、十分な議論と正確な情報が与えられないまま、判断を求められていることを危惧する有志の集まりです。

私達と同じように問題意識を持つ市民や団体が、多くの方に発信して頂けるように、自由に使えるロゴデータなどを制作し発信することに致しました。いずれも、皆様の名の下に配布・利用を頂けるものです。

なお、私達自体は特定の政党や候補者を支持する政治的目的はございません。(当サイトのクリエイティブを利用した皆様の活動におかれましてはこれを制限するものではありません)

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私たちの意思は、ただそれだけです。

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